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日陰の膨らみ




げんこつをひとつくらいたいのだが
だれもこぶしをふりあげてくれない
たぶんなぐりかえされそうな
そんなかおをしているのだろう
それじゃぁあんたたちは
なぐりかえされないとわかりさえすれば
こぶしにちからがはいるんだろうか
それならめをつぶっているから
このどまんなかのくぼんだあたりに
いっぱつくらわせてくれないかい

殴れと言われると殴れないらしいので
僕は目をぎょろぎょろさせて
破壊する相手を物色した
けれども半径三メートルに
人は避けて入らなかった
それが商売のあのひとたちも
なぜか知らないふりをした
丸腰の僕は仕方がないから
危なそうな得物をさがした

身の危険を感じたならば
先に手を出すやつもいると
そう信じていたのだけれど
余計に人は寄ってこない
半径五メートル いやそれ以上
そうか判った
もっと弱そうにみせなければいけない
僕は散髪屋をさがしはじめた

うんと弱そうな髪型にしてもらい
裏道を選んでうつむき歩いた
そうして僕に寄ってきたのは
明日にも死にそうな痩せた女で
幾らでもいいから今夜一晩とせがまれて
いいよ殴ってくれるのならと
そういう趣味のひともいるものね
ちょっと勘違いしてないかな

女の部屋は薄ら寒く
女の身体みたいに痩せこけていて
布団だけが膨らんでいた
羽毛布団だから干さなくてもいいの
日陰でも膨らむから便利でしょ
けれどもシーツは生乾きの
あの雑巾臭さが染み付いていた
それと自分の床屋臭さで
鼻血が出るほど情けなかった

殴ってもらうのは後にして
痩せた胸に鼻をうずめた
いや 意外とそこは質感があり
冷えた鼻先も暖められて
けだるさに全身の力が抜けた
これって安らぎというものなのかな
自分でもよくはわからないけど
僕は楽になっていた




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